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TPPと国家戦略特区


環太平洋パートナーシップ協定(TPP : Trans-Pacific strategic economic Partnership agreement)は、農産物などで馴染みがありますが、日本の医療市場の開放も求めています。

高額療養費制度が無くなったら、会計窓口での支払いは大変なことになるかも知れません。

日本の年間医療費は40兆円、うち高齢者医療費は23兆円。

現役世代:7,800万人で高齢者:3,300万人を支えており、

医療費、特に高齢者医療費の割合が大きいとされています。

厚生労働省は、この高額な医療費の国庫負担を抑えようとしています。

日本には、いつでもどこでも平等に医療が受けられる「国民皆保険」が存在します。

さらに、月々一定額以上は自己負担額のかからない「高額療養費制度」を適用しています。

救急車を呼ぶと数万円、盲腸の手術が1回200万円と医療費が非常に高く、

たとえ医療保険に入っていても、いざとなれば負担に耐え切れず破産してしまうアメリカ人が

この制度のことを聞くと、信じられないと言って絶句するそうです。

TPPと国家戦略特区によって、これら世界がうらやむ制度が失われてしまうかもしれません。

アメリカは、当初4カ国でゆっくり進められていたTPPに加わると、

またたくまに主導権を握り、日本市場参入への新たな戦略を展開しました。

それでも日本の医療システムへは、そう簡単には参入できないはずでした。

第2次安倍内閣/産業競争力会議のなかで、竹中平蔵議員(当時)が「国家戦略特区」構想を提案しました。

これは東京・大阪・愛知の3大都市圏を中心に、国内外のヒト・モノ・カネを参入させて、

経済成長を呼び起こそうというものです。

「特定機密保護法」採決の大騒ぎの陰で「国家戦略特区法」はひっそりと国会を通過し、

まず特区内であらゆる規制がどんどん取り払われ、外資系企業にビジネスチャンスがもたらされることになりました。

国内に特区が充分に広がり、外資系企業がしっかり稼げるようになったところでTPPを締結します。

いちど広げた規制はもとには戻せない(ラチェット条項)ことから、規制緩和は保障されています。

これからはアメリカ系保険会社の日本市場参入も、さほど難しくはありません。

公的医療については1980年代から段階的に切り崩されてきており、

がん保険などを掲げる保険会社が席巻しています。

混合診療や医療・介護を合わせた施設の大型チェーン化が特区で解禁され、

2014年からヘルスケアリートが上場、海外資本も事実上経営に参加できることになりました。

病院・介護施設・老人ホーム・透析センター、これで60兆円の規模。

外資にとって優良な投資市場です。

    ※ヘルスケアリート(Health Care Reit)

      ・・・ 投資法人の仕組みをつくって市場から資金を集め、

ヘルスケア施設を取得・長期管理しながら、賃貸収益を投資家に分配します。

28年度診療報酬改定では、「本体微増」の財源確保のために「高額療養費」を見直し、

高齢者の負担上限を引き上げることになりました。

「国民皆保険」を失い、「高額療養費制度」が無くなってしまったら、

私たちの会計窓口での支払いは大変なことになるかもしれません。

出典 : 堤未果 沈みゆく大国アメリカ逃げ切れ日本の医療 集英社新書 ほか

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