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いよいよ血液内科の領域に


スペインの画家ゴヤの代表作のひとつに、「我が子を食らうサトゥルヌス」という絵があります。ローマ神話の農耕神サトゥルヌスが、我が子に将来殺されるという予言に恐れを抱き、5人の子を次々に呑み込んでいったという伝承をモチーフにした作品です。「肺がん患者5万人が1年使ったら総額1兆7,500億円」と、高額薬剤費問題に火をつけた國頭英夫・日本赤十字社医療センター化学療法科部長によれば、「新しいタイプの高額薬は次々と現れ、薬剤費は膨張する。医学の進歩、人口高齢化が原因。それでもまだ現役世代の負担を強いるのか。私たちの姿について、この絵のことを思い出す。」といいます。

厚労相の諮問機関 中央社会保険医療審議会は11月16日、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の薬価50%引き下げを提案し、了承されました。製造販売元の小野薬品工業は、オプジーボの売り上げを年間1,260億円と見込みました。年間販売実績が想定を超えた場合の、ヒット商品についての薬価引き下げルール「特例拡大再算定」に当てはめれば、下げ幅は最大25%です。厚労省は、年間販売額が1,500億円を突破すると試算し、 「薬価が高額のまま患者が増えれば、医療保険財政を破綻させかねない」として、特例拡大再算定にて1,500億円を超えた場合の、薬価50%引き下げを決定しました。

薬価改定は原則2年に1回ですが、次回改定予定の2018年04月を待たずに、これを2017年02月から実施します。新薬開発には10年以上の期間が必要であり、商品として発売にこぎつける確率は25,000分の1とされています。国内製薬企業の開発費は、年1,300億円を超えます。オプジーボは、適応拡大で対象患者数が急増し≪2016年度改定に間に合わなかった薬剤≫扱いなのですが、「現行ルールを大きく逸脱している。急激な改変は企業の収支に大きく影響し、新薬の研究開発意欲をそぐことになりかねない。今後ニ度とあってはならない。」と、製薬業界は猛反発しています。

オプジーボは久々に登場した国内発の新薬で、小野薬品も09月中間決算で最高益を記録し、今後も大きな収益源と期待されていました。「これまでに相当儲けただろうと小野薬品へのねたみ」 「オプジーボは良い薬なのにと小野薬品への同情」、そして「小野薬品としては、引き下げは痛いが、早く悪い話題から逃れて次のステップへ進みたいのでは?」等、製薬業界では「企業経営の安定性・予見性からみてひとごとではない」との思いがあるようです。さらに同じ免疫チェックポイント阻害剤のMSD(メルク)の「キートルーダ」はじめ、競合薬の市場参入がひたひたと迫っています。

前後しますが、11月11日、厚労省はオプジーボの古典的ホジキンリンパ腫への適応拡大を了承しました。1ヵ月後に正式承認され、保険適用となる見込みです。「患者さんに対し、あなたは税金のムダ使いをしているだけだと言えるのか」とドクターを苦しめた、あるいは、「自由診療の免疫療法クリニックへ患者が殺到している」とウワサされた『オプジーボ』は、いよいよ血液内科の標準療法の領域で使用が始まります。

出典 : 週刊ダイヤモンド 2016.10.18 ほか

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